誰でも自分を評価してくれたり、絶賛してくれれば、
嬉しくて舞い上がるのだろう。
だがわしはその辺の感覚が人とはかなり違うと思う。
それは少年ジャンプ、マガジン、サンデー、キング、
コロコロコミック、ヤングジャンプ、その他の漫画誌から
SPA!からSAPIOまで、かなり多くの読者傾向の違う
雑誌で連載してきて、人気投票と格闘してきたからだ。
トップになったこともビリになったこともあり、
下位を低迷していれば、忽ち打ち切りになる。
打ち切りになったら、その日から従業員を食わせて
いけなくなる。
無収入で給料をいつまで払い続けられるか?
解散するか?解散したら、今までの技術の積み重ねを
捨てなければならない。
新連載を獲得するか?勝てる作品を創れるか?
スタッフを遊ばせておいて、貯金を切り崩していく
期間はどのくらいになるか?
そういう究極の選択に突き当たる。
わしは人の評価を言葉より「数字」で信じるようになった。
本当に自分が評価されているかどうかは「数字」で出てくる。
人気投票が上位に来るか、あるいは単行本が売れる、
これだけがわしへの本当の評価だ。
言葉で評価されれば、人間だから嬉しいと思う。
だがそれ以上に警戒心や猜疑心が働いて、売れなきゃ話に
ならんとブレーキをかける。
自分の身近にいるファンがどんなに絶賛しても、わしが
調子に乗ることはないし、真に受けることもない。
褒め言葉で従業員を食わせていくことはできないのだ。